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Favorite Books #3

 

 

ジャズ・スタンダード・コレクション 100

(菅野義孝・著)

 

 

 

菅野さん著作紹介第二弾です。

 

左ページがメロディ譜
右ページがアドリブ用のコード譜とアナライズ譜
になっているスタンダード集です。

 

入門・目からウロコのジャズ・ギターのページで紹介した、
私が理論を勉強し始めるきっかけとなった本です。

 

以下にこの本がお気に入りな理由を書いていきたいと思います。

 

 


■スタンダード曲のアナライズが100曲分!

 

 

まずこの本のがどのようになっているかは、
菅野さんの
ホームページの「スタ本解説」のタブから見ることができます。

 

 

私はこの本と、前述の『入門・目からウロコのジャズ・ギター』

納浩一さんの『ジャズ・スタンダード・セオリー』でアナライズの方法を覚え、
この本で実際にアナライズの練習をしました。
自分のやってみた結果と答え合わせをして、
分からなかったところや違ったところを見直したりしたりしました。

 

ところで


曲のアナライズができるようになると、どんないいことがあるの?
という疑問をお持ちの方のために補足しますと・・・


アナライズのメリットは、個人的には以下の2点だと思います。

 

曲への理解が深まることで、
①アドリブの時、適切かつ効果的な音が選択できるようになる
②曲のコード進行が楽に覚えられるようになる

 

自分の場合ですが、アナライズを覚える前は、

 

アドリブ=とりあえずコードトーン
曲を覚える=コードを丸暗記

 

という状態で、曲を理解していませんでしたし、
それ故に曲を覚えることにものすごい労力を費やしていました。


そりゃそうです。
丸暗記なんですから。

 

ですが、アナライズをする習慣がついたことで

そのコードの機能によってアドリブで使える音やスケールに
多くの選択肢があるということが理解できました。

 

また、今まではその曲に出てくる数だけコードを覚えていたのが、
例えば、Cの曲ならC6=I6、Dm7=IIm7、G7=V7などと
「度数」に置き換えることで、覚えることが12キーで共通化(1/12に)でき、
さらに複数のコードを機能によって固まりとして捉える、
例えばCの曲で「Fm7-Bb7」というコード進行を「サブドミナントマイナー」
と置き換えて覚えたりすることでさらに1/3位になり、
覚えることがぐっと減ったことで曲がするする覚えられるようになりました。

 

さらにさらに、
和音を機能で捉え、サウンドと結びつけられるようになったことで、
和音を聴きとる力がすごく上がりました。
これは個人的にかなり劇的な変化で、
コードの耳コピがかなり速くなりましたし、
自分でリハーモナイズをしたり、コード楽器のメンバーに、
ここはこの音を入れて欲しいとか、こんな和音を弾いて欲しいとか、
具体的に言葉でリクエストしたりすることも
少しずつできるようになってきました。
いいことづくめですね。

 

えー、アナライズのメリットの話が長くなりましたが、

 

そんないいことづくめのアナライズを身につける上で大事なのは、
とにかくたくさんの曲でアナライズを実践して練習することです。
そんな練習の題材となるアナライズが100曲分載っている教材なんて、
他にはないのではないでしょうか?

 

 


■原曲への忠実さとアドリブしやすさを兼ね備えた譜面

 

 

実は、ここからの方が個人的には推したいポイントだったりします。

 

曲に自分好みのアレンジを加えることが増えてくると、
市販の譜面はその通りに演奏するものというよりは、
ガイドラインとしてのみ使ったり、
複数のものを比較検討して研究するためのもの、
という捉え方になってきます。

 

特に映画音楽やミュージカルの曲などの歌ものは、
ジャズミュージシャンによってカバーされる際に
大幅にコードがアレンジされていることが多く、
その譜面が、誰によるカバーを参照しているかによって
コードがだいぶ異なる場合があります。
その譜面を書いた人の意図が反映されていることも多いと思います。

 

そんな時には、この本のように
できるだけ原曲のコードに近付けた譜面が1つあると、
曲を正確に理解する助けになります。

 

そう、その曲をきちんと理解するためには、
出来るだけアレンジが加えられる前の状態を知るべきだと思うのです。
そうすることで作曲者の意図が理解しやすくなります。
またそれとアレンジされた他の譜面を比較することで、
曲がリハーモナイズさていく過程を学ぶことができますし、
元の状態を踏まえて自分好みのアレンジを加えやすいです。
(実際には、歌ものは多くの人の手でアレンジが加えられすぎて
原曲のコードを知ることはかなり難しいみたいですが)

 

ただし、原曲に近いコードや

メロディラインに合わせたコードのままだと、

アドリブがしにくい場合があります。


そのような場合を考え、この本の右ページには、
アドリブ用のコードが書いてあります。
メロディに合わせて細かく分解されているコードが
まとめて大きく捉えられていたり、
逆に1つのコードがII-V分解されていたりして、
ジャズで一般的なコードにアレンジする過程を学ぶに役に立ちます。

 

 

またこの本、メロディも
原曲への忠実さを意識して書かれているそうです。


有名な録音で誰かがフェイクしたものを
そのままその曲のメロディとして覚えてしまっていることが
結構ありませんか?(私はよくあります…)

 

が、やはり原曲はどんなメロディで、
そのフェイクがそこにどのように変化を付けた結果なのか
ということは知っておいた方がいいと思います。


元々がどのようなメロディだったのかを確認する時は
この本を見るようにしています。

 

 


■徹底してシンプルなコード

 

 

手持ちの譜面をそのまま使う場合でも、
それを書いてあるまま演奏するということはあまりなく、
どんなハーモニーを出すかはメンバーの感性とか、
その場の状況を踏まえての判断に委ねることになると思います。

 

特に、信頼しているメンバーとサウンドを作っていく時には、
細かいテンションノートの指定や
凝ったリハーモナイズなどのないシンプルな譜面が欲しくなります。

 

譜面上で細かい指定があると、
どうしてもそのサウンドに引っ張られてしまう気がするからです。

 

もちろん、セッションなどで初対面のメンバー同士で
サウンドをある程度まとめなければならない時などは、
テンションが指定された譜面は役に立つと思います。

 

ただ、メンバーの感性を最大限に引き出したいという時は、
譜面はできるだけシンプルな方がいいと思うのです
(そもそも譜面に指定されているテンションは初めからあまり意識しない、
という人も多いのかもしれないですが)。

 

その点、この譜面はテンションがあえて一切省略されており、
凝ったリハーモナイズなどもないので、
美しいほどにシンプルです。

余計なサウンドに引っ張られる心配がありません。

このシンプルさは、他の譜面集にはない大きな特徴です。

 

ただ、メロディノートがテンションになっている場合など
(例えばA列車の3-4小節目のメロディノートには#11thが含まれる)、
その曲のキモとなるテンションは適宜判断して使えることが
この譜面の良さを活かす鍵になるのかなと思います。

 

 


まとめ

 

■アナライズの練習にうってつけ!
■曲を正しく理解するのに役立つ、シンプルで信頼できる譜面

 

中級者以上は持っていて損はなし!
将来にわたってずっと役に立つ本だと思います。

 

 

 

 

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